こんにちは。那須野です。
半年の育休から復職してそろそろ1年が経とうとしています。今のところ、あれやこれやの手段を駆使して自由度の高い働き方を作り出すことで、幸いながらギリギリのところで仕事と家庭の両立を実現できている感を持てているので、そういった自由度の高い働き方を実現するのに必要なビジネスパーソンとしてのスキルと志向性について、とりとめもない考察を言語化してみようと思います。
娘との今秋のツーショット。なお本編とは関係ない。
始める前に、いつもの注意点をご覧いただきつつ、
★注意★
育児は人それぞれです。100の家庭があれば100の事情があり、100の育児があって然るべきものです。たった1つのあるべき姿なんて存在しません。人の意見を鵜呑みにするのは危険ですし、逆に安易に強要してよいものでもありません。自らが、家庭環境と子供の状況を見定めたうえで、子供とどう成長していきたいかを考え、これだと思う方法に思い切ってチャレンジしつつもダメそうなら変えていくトライアンドエラーの姿勢が大切だと思います。なのでこの投稿も、鵜呑みにしないでください。
それでは本編をどうぞ。
言語化の前提として、まずは自由度が高い働き方の必要性について、子育てをしながら働くビジネスパーソンが持つ数多くのリスクをマネジメントするという観点から考えてみたいと思います。
第一に、我が家のように保育園に子供を通わせている家庭では、保育園に通っていない時間帯は子育てに従事することになります。保育園に通っていない時間帯は意外と多く、①平日の夕方から翌朝まで、②休祝日、という基本の2つだけでなく、③ワクチン接種後の残りの時間、④登園時に熱がある日、⑤登園後に熱があると発覚した日の残りの時間、といった時間帯も該当します。そのため、
問題1:朝早く出勤して仕事、ができない
問題2:夜遅く残業して仕事、ができない
問題3:休日に仕事、ができない
問題4:働きすぎて疲れても、家で睡眠に全振りして回復することはできない
問題5:自分が元気でも、子供事由で定期的に有給休暇を消費する必要がある
問題6:保育園コールで当日の予定全キャンセルになりうる
問題7:社内コミュニケーションである飲み会に参加できない
といった7大問題を常に抱えることになります。
問題1~3とはつまり、たとえ仕事が遅延しても、プライベートを溶かして業務時間を増やすことでタスクを消化するというあのワザが使えないことを意味します。朝も、夜も、休日も仕事には当てられません。①業務の遅延を個人の裁量で取り返すことの難易度が高いというリスクを背負います。
リスク4とはつまり、業務時間を増やせないからと限られた時間の中で『超』無理をして体調を崩しても、家に帰ったら夜勤(夜泣きする子供の面倒)を含めた育児が待っているため、即倒れて翌朝までに体調を整えるというあのワザが使えないことを意味します。これは平日倒れることができないだけでなく、平日たまった疲れを休日がっつり休んで回復することもできないということでもあるため、②突発的な業務負荷を背負いにくいというリスクを意味します。
リスク5~6とはつまり、少なくとも月に1回ぐらいは有給休暇をとらざるをえないこと、突発的に自分が出社できない事態を受容せねばならないことによって、③自分不在の頻度が増えるによって業務に支障が出やすくなるというリスクを意味します。
リスク7とはつまり、期の始まりや終わりによくある打ち上げや歓送迎会的な飲み会が、同僚の人となりをよく知り業務連携を円滑にするためのツールとして機能している職場において、同僚のことを深く知れずにスムーズな業務連携に支障をきたしたり、また自分自身のことも「あの人何しているどんな人かよく分からないよね…」と言われて(距離を置かれるまではなくとも)近寄ってもらえなかったりすることもあり、④良好な人間関係による練度の高い業務連携を成立させにくいというリスクに繋がってきます。
リスク単位でまとめなおすと、
①業務の遅延を個人の裁量で取り返すことの難易度が高いというリスク
②突発的な業務負荷を背負いにくいというリスク
③自分不在の頻度が増えるによって業務に支障が出やすくなるというリスク
④良好な人間関係による練度の高い業務連携を成立させにくいというリスク
が並ぶわけです。リスク①~③の端的な解消には属人的なタスクを減らすことが有効ですが、それをするにもリスク④が邪魔をするケースもあるため、なかなか個人では解決しにくい構造的な問題となっています。もはや、”モーレツサラリーマン” を前提とした職場においては、子育てしながら働くことは『不自由な働き方の塊でしかない』でしょう。
そんな、そもそも圧倒的に不自由な働き方を強いられる子育て世代の視点から見た『自由度の高い働き方』とは何か。それは、『子育てに十分な時間を投下したうえで目標にコミットするために、効果的かつ効率的な手段を開放し、仕事に当てられる時間を純度高く仕事に当てること』であり、重要なのは、①目標へのコミット、②手段の開放、③純度の高さ、の3つが揃うことだと考えています。
働き方改革というと、フレックスタイムや従業員満足度調査、社員研修などの制度面の充実や、業務の標準化、残業ゼロなどの取り組みがクローズアップされがちで、もちろんそういった取り組みは重要なのですが、これらはあくまで『表の組織視点』です。子育て世代に限らない話ですが敢えて「子育て世代の働き方改革で重要」と言いたいのが、『裏の個人視点』です。
働き方改革として働きやすさを徹底していくと、「オフィスにいないから物理的に監視ができない」,「働く時間が別だから物理的に監視ができない」,「日によって労働時間がまちまちだから短期的な進捗にはムラがあって単純な進捗管理ができない」など、場所や時間を限定してきた従来の働き方は考えられないようなデメリットが見えてきます。早い話がマイクロマネジメント的な組織管理が機能しなくなってきます。
そのため、働きやすさを徹底しつつ高い業績を上げるには、上司によるマイクロマネジメントに頼るのではなく、部下による能動的なセルフコントロールを徹底させるだけでなく、あらゆる手段を調達する覚悟のもとで長期目標へのコミットを徹底させるという志向性が重要だと考えています。
そして、上司や同僚、部下との関係においては、セルフコントロールとしての『ホウレンソウ』が極めて重要です。というのも、”フツウ”の職場ではホウレンソウが『”フツウ”に働く人』に合わせて設計されていることがほとんどであり、設計された通りにホウレンソウをこなしているだけだと業務に支障をきたすリスクを伴うからです。
長時間残業や休日出勤など、火事場の馬鹿力的な働き方が難しい子育て世代にとっては、ただでさえ通常のリスクすら許容しがたいのに、余計なリスクを増やすなど到底許容できることではありません。全力でリスクを消しにいく必要があります。
このリスクに関しては、ゼロべースで自らが担うミッションを見つめ、望ましい報告、連絡、相談の在り方を考え直すべきだと考えます。ただし、それは必ずしも『”フツウ”のホウレンソウの上にタスク追加するだけ』ということではなく、場合によっては”フツウ”に働く他のメンバー全員が関わるホウレンソウの場に同じようには関与しないようにすることが最適解である場合も出てくるように思えています。
例えば、定例会議でメンバーが一堂に会する中で、自分だけがテレカンで参加するとしたらどうなるでしょうか? 一般論として、テレカンでの参加は理解度が下がります。その理解度が下がることを上手く武器として活用しようとすると、
などのメリットがあります。動き方はまず自分で考えるべきだと感じますが、個人目線でのメリット・デメリットというよりも、部署目線、全社目線でレバレッジを働かせられるかどうかという上位レイヤーでの効用を狙っての動きとすると、より自由が利くようになるように感じます。
また、長期目標へのコミットについては・・・文字で書くのは容易いですが、実行するのはとにかくタフです。
自分のスキルが足りなければ自分で身に付ける、他の人と連携して解決するのであれば連携を組む、人が足りなければ採用する、アウトソースして解決するのならアウトソースする、新しいツールがあれば解決するのならツールを導入する、既存ツールを改修すれば解決するのなら改修する、優先順位の低いタスクを延期すればどうにかなるのであれば延期する、運用や制度を変えれば解決するのであれば変える、外部にコンサルティングを依頼して解決するのなら依頼する・・・つまり、短期的に残業で乗り切ることを放棄する代わりに、それ以外のあらゆる手段を動員して長期目標の達成を目指すというのが長期目標へのコミットだと考えます。
これは、人によっては自由度が高すぎて何をやったらよいのやら悩んでしまう動き方です。場合によっては、多少残業すれば許される職場の方が楽だったのではないかと感じる人もいると思います。
ただ、手段から解放されるということは、リモートワークや時短勤務、フレックスタイム制度、ノー残業などによって場所や時間という手段から解放されるという意味だけでなく、既定の業務の進め方からも解放されてもらわないと困るという意味も含めたときに、初めて釣り合うように思うのです。
と・・・
個人的にこうやって書いて頑張ってみることはできなくもない話ですが、日本の社会全体としてそれが成立するかどうかは別の問題です。マニュアルに従って既定の作業をこなす働き方が多い現代日本において、セルフコントロールや長期目標へのコミットを重視する志向性に転換できるかどうかは非常に難しい論点です。この志向性が向いている仕事領域では大きく変革が進んだとして、向いていない仕事領域での働き方はどのように改善していくのか。全体として同じような改善が進んでいくのか、はたまた二極化の様相を呈するようになるのか。この問題は、今後、社会的に議論が活発化していくべきだと感じるところです。
さて、所感を長々と書いてみました。
冒頭にて『超不自由な子育て世代の働き方』と書き始めましたが、「セルフコントロールと長期目標へのコミットを前提にあらゆる手段から解放されさえすれば非常にクリエイティブかつエキサイティングな働き方に切り替えるきっかけにできる」という仮説に対しては、育休から復職しての1年間弱で、ある程度の実感を持てるようになりました。
ただし、その段階まで至るには、「偶然に近い様々な不確定要素を片っ端からクリアしていなければならなかった」というのもまた実感として持ててしまっており、「個人としての解と組織としての解、そして社会としての解は似たところは多いにしても違うところも多いだろう」と思えてしまえるところに、日本の働き方改革、そして日本の子育て世帯の働き方改革の難しさを感じるところです。
さすが、『課題先進国』日本といったところです。
追伸:でも一番重要なのは体力です。色々やってきて一番重要だなと思えるのは、小手先の知識や経験やスキルや人脈や組織のサポートよりも、自分の体力だと感じます。体力があれば、もう一歩踏み出して、もう一つ多くのことにチャレンジできます。体力、大事です。筋トレ、再開しよ。。(自戒)