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育児
2019/02/17

【男性目線の育児#11】育児における希望と現実、家族の幸せと変わりゆく思いという4つの論点

今の日本では政府の後押しもあり、男性の育児休業には追い風が吹いています。もちろん育休を取る男性はまだまだ少数派ではあるものの、育児の数ある手段のうちの1つとして脚光を浴びているのは事実。であれば、『育休は誰が取るべきか?』を考え、然るべき男性が育休を取り、そうでない男性が別の手段を取れるように、論点が整理されている状態が望ましいと思います。

ということで、たかだか半年ではありますが、実際に育児休業を取得し、復職して1ヶ月経った私の立場から、なるべく中立的に、男性の育児休業を含めた育児の論点について書いてみたいと思います。

 

※なお本論は、第一子を迎える共稼ぎ世帯を念頭に置いた議論である点をご留意ください。

 

育休中に妻一人旅につきワンオペの図1

 

★注意★

育児は人それぞれです。100の家庭があれば100の事情があり、100の育児があって然るべきものです。たった1つのあるべき姿なんて存在しません。人の意見を鵜呑みにするのは危険ですし、逆に安易に強要してよいものでもありません。自らが、家庭環境と子供の状況を見定めたうえで、子供とどう成長していきたいかを考え、これだと思う方法に思い切ってチャレンジしつつもダメそうなら変えていくトライアンドエラーの姿勢が大切だと思います。なのでこの投稿も、鵜呑みにしないでください。

 

育児における4つの論点

私の場合、出産前にはプロジェクトマネジメントの視点から整理(詳細はこちら参照)して臨んでいたわけですが、今考えると視野が狭かったように思います。育児における論点を今挙げるとすると、以下の4つを挙げたいと思います。

 

①お互いの希望をどう積み上げるか?

②出産直後の現実をどう乗り越えるか?

③家族の幸せをどう設計するか?

④変わりゆく思いにどう折り合いをつけるか?

 

プロジェクトマネジメント視点から描いていたのは主に②でした。②だけでも大変なのですが、①と③も前提として大切ですし、意外と④も大切だなと感じさせてくれたのが私の6ヶ月の育休経験でした。一つ一つ見ていきます。

 

①お互いの希望をどう積み上げるか?

夫婦は妊娠と出産を経てライフステージが変わります。『新しいライフステージにおいてどんな生活を送りたいか』という題目については、夫婦ともに、プライベートとビジネス両方において希望を持っていることでしょう。お互いの希望を最大限に叶えるには、まずは腹を割って話をすることが肝要に思います。

育休から復職する前提で書くと、日々の生活サイクルをどうしたいか、育休はどれくらいの長さなら許容できるか、いつまで子供の面倒をつきっきりで見たいか、育休中に自分の時間として何をやりたいか、そのためにどれくらいの時間を定期的に確保したいか、復職後はどう働きたいか、といった自分に対する希望はあるでしょう。一方で、どれくらい、どのようにして家事育児に貢献してほしいかというパートナーに対する希望もあるでしょう。

それ以外にも、子供をいつから保育園に入れたいか、子供の生活サイクルをどうしたいか、子供に対して何をしてあげたいか、親族との付き合いをどうしたいか、家財や部屋割りをどうしたいか、場合によっては家をどうするか等も希望として出てくるでしょう。

なお、人によっては「復職したくない。専業主婦(主夫)になりたい。」という希望もあるでしょう。育児と対峙するうえで、これも立派な一つの選択肢です。

 

昭和の家庭像が完全に崩壊し、一応は男女平等の旗のもとで育ってきた今の子育て世代では、こういった希望の揺れ幅が極めて大きいように感じます。ゆえに、話し合いを始めるために、腹を割って希望を伝えあうことが必要だと思います。

お互いの希望が全て通る道が見つかれば、その道を真っすぐに進んでいけばよいのですから何とも素敵なことです。でも、一本の道が見えないことは往々にしてあります。そういったときは、後述する②や③を踏まえての議論が重要になっていくように思います。

 

②出産直後の現実をどう乗り越えるか?

出産直後の現実は、①で書いたような個人の希望の積み上げだけでどうにもならない可能性が大いにあります。

というのも、出産直後は妻の体力が落ち切っており、まず数週間は、まともに動けません。産後3ヶ月ほどは骨盤もグラグラなままですし、子供も月齢3ヶ月ぐらいまでは首が座っていないので外出も大変です。そして第一子であれば、ありとあらゆる育児作業が初心者状態で、試行錯誤の連続です。極めて不安定であると言わざるを得ません。

 

プロジェクトマネジメント視点での育児記事にも長々と書いていますが、産後の要点を改めて整理して挙げると、

(1) 効率的に育児ができる家庭環境作りのために努力を続ける

(2) 家事や育児の努力が評価されてモチベーションを維持できる環境を維持する

(3) ヘルプを頼んだり手を抜いたりできるようにして、ピーク負荷を軽減できるようにする

の3点については、重点的に対策を打つべきであるというのが持論です。自分たちの希望を多少曲げてでも優先して対処すべきであると思うぐらいです。

特に(3)については、『出産直後でまともに動けない妻を誰が24時間支えるか』という人的リソースの話が出てきます。里帰り出産が多いのは、実家の親に支えてもらう意味合いが強いでしょう。出産直後から夫が取得する育児休業も、同じ意味合いがあると思います。

里帰りをせず、夫が育児休業を取らない場合には、子育て経験のある親族どなたかに一時的に同居してもらって支えてもらう方法や、高頻度で家事代行やシッティングを頼んで第三者に支えてもらう方法もあります。

また、いずれの方法も取らずに平日日中は妻に任せつつ、平日朝夜と休日に夫が家事育児にフルコミットする方法もありでしょう。私の経験上、朝家事の1時間半で朝食作りと日中に必要な家事を賄うことも不可能ではないため、実現可能性は十分にあると考えます。

 

ここで重要なのは、一つの方法に固執しないことです。里帰りが難しい家庭もあるでしょう。家事が絶望的に苦手で外働きに徹した方がよい夫もいるでしょう。親族の同居が難しい家庭もあるでしょうし、家事育児の外注といってもプライベート空間に第三者が入るのを好まない人もいるでしょう。夫婦でリスクを直視したうえで、対話を通じて、然るべき対策を準備することが大切だと思います。

 

なお、対策なしで妻のワンオペ育児を前提に、夫が外働きで家事も育児もせず・・・という状態は高確率で産後クライシスを迎えますゆえ、あまりお勧めできない旨は述べておきたいと思います。

 

③家族の幸せをどう設計するか?

さて、①と②を考慮したうえで、敢えて③の登場です。①と②の議論を単純に積み上げると、必ずしも家族の幸せには結び付かない場合が出てくるように思います。そのため、改めて家族の幸せは何かを考え、これで良いかを見極める必要があります。

よくある例で言うと、育児にリソースを寄せすぎたがために世帯収入が激減し、一時的に、ないし恒久的に貧困に陥ってしまうリスク、そして逆に、外働きにリソースを寄せすぎたがために産後クライシスを迎え、家族そのものが消滅するリスクは容易に想定できると思います。一方だけに寄っても幸せには結び付かないわけで、『うまくバランスを取る』という難しい課題にぶつかります。

 

また、我が家の例で言えば、行き過ぎた保活努力が心を蝕むリスクを危惧していました。無理矢理に遠方の保育園に通うことで苦労を重ねたり、利用調整で落ちて死に物狂いの保活を展開することが果たして自分たちの幸せに繋がるのか。出した答えは明確な「No」であり、結果として見学に行く保育園の数を制限し、申し込む保育園の数は5つに絞りました。もしそれで落選したら、夫婦二人が復職することはあきらめ、妻が復職し、私が育児をしながらネットで小遣い稼ぎをするつもりでした。そちらの方が家族の幸せに繋がると考えたのでした。。

 

目の前に転がる『やるべきだとみえること』に片っ端から全力で応えていくことが必ずしも幸せには繋がらないということは、ナッシュ均衡とパレート最適が必ずしも一致しないという事実からも明白です。だからこそ、議論の末に出てきた答えは、改めて見直す必要があります。

①の希望を積み上げ、②の現実に妥協して、紆余曲折を経て作り上げた計画は、果たして自分たちのためになっているのか。全体観を損ねたものに着地していないだろうか。今改めて、自分たち家族の幸せに向き合い、問うてみるべきだと思うのです。

 

④変わりゆく思いにどう折り合いをつけるか?

さて、①~③を経て夫婦で自信をもって育児生活を始めたとしても、とある問題がここで発生します。実際に育児をしていると、大なり小なり思いが変わるのです。

 

入園まで子供を見るつもりが、

「やっぱり早く復職したい。辛い。こんなのだと思わなかった・・・」

 

すぐに復職するつもりだったのが、

「やっぱり育休延長して、できるだけ長くこの子を見ていたい・・・」

 

さらには

「やっぱり専業主婦(主夫)がいい・・・」

 

軽い話で言うと、

「やっぱり洗濯乾燥機、買いたい・・・」

 

いくらでも、思いは変わります。

将来なんて、そこまで明確に見通せるものではないし、経験を積み重ねれば考え方は変わります。それが成長と言うものです。育児を通じて親は大きく成長します。そのため、親の成長を受け入れる土台が家庭に必要なのです。

ライフステージが変わるにあたって夫婦が深い対話を積み重ね、思い切って家庭環境を変え、いよいよ新しい生活に入ります。そこで大切なのは、それだけ時間をかけて決めたことがパートナーによって覆されようとしても、それを受け入れるだけの寛容さを持つことだと思います。

 

ここで、

「言ったことには責任持てよ」

なんて言い捨ててしまうと、言いたいことを言えない雰囲気が夫婦の中に立ち込めて、育児をする家庭環境が改善されずに徐々に悪化していき、ストレスが徐々に積もっていき・・・行きつく果てはご想像にお任せします。そうならないためにも・・・

 

もちろん変わりゆく思い全てに応えることはできないでしょう。家の制約はあるし、お金の制約もあるし、時間の制約もあります。仕事との兼ね合いもあるでしょう。

ただし、パートナーと一緒に何十年と過ごすことを願うのならば、まずはパートナーの要望を聞き、変わりゆく思いの経緯を確認し、どうにかできないか一緒に考え、相手の思いを受け入れようとすることは、最上級に重んじられるべきものだと思います。

変わりゆく思いに折り合いをつけるのは並々ならぬ努力が必要です。だからこそ、これを乗り越えられるかどうかが、今後の人生の試金石として重要なのだと感じる今日この頃です。

 

育休中に妻一人旅につきワンオペの図2

 

まとめ

ということで、半年間の育休期間と1ヶ月間の復職期間を経て私が学んだ育児における4つの論点、

①お互いの希望をどう積み上げるか?

②出産直後の現実をどう乗り越えるか?

③家族の幸せをどう設計するか?

④変わりゆく思いにどう折り合いをつけるか?

について書き連ねてみました。なかなか難しいことばかりの内容であるのは承知の上ですが、この文章が1つでも多くの家庭の幸せに繋がることを願ってやみません。

 

また、育児休業についても、希望者が必要なだけ取得でき、かつ希望しない人が虐げられないでいられる社会が早期に実現することを願いつつ、その前提として「性別に関係なく家事育児に貢献するのが標準である」という文化が日本に根付くことを願ってやみません。

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ブログ著者について
那須野 拓実(なすの たくみ)。たなぐら応援大使(福島県棚倉町)。トリプレッソを勝手に応援していた人。元語学屋。時々写真垢とか手芸垢。山とか滝とか紅葉とかが好き。本業はナレッジマネジメントとかデータ分析とかの何でも屋。コロナワクチン接種済み。