一人十郷 - Takumi Nasuno Photography
ビジネス
2018/01/06
マーケティングリサーチが見据えるべきはセリングとマーケティングの連携にあると、2018年始めに思う件について

気がついたら2017年が終わって2018年が来てしまいました。

年末年始にかまけていたら3週間ほどブログ更新無し状態が続いてしまっていたのを悔やみつつも重い腰を上げられていなかったところ、年末年始恒例の有識者による本年の業界トレンド予想が脚光を浴びていましたので、一念発起して書いてみることにしました。

 

具体的な主張に入る前に、本論を書くにあたって心を動かされた各種トレンド予想へのリンクを、感謝の意を込めてここに紹介させていただきます。示唆に富んでいて勉強になるので、拙著駄文より優先してご覧くださいませ。

 

※本投稿は個人の主張であり、特定の団体は関係ありません。

 

それでは本題。

2017年末に書いた「佳境にあるマーケティングリサーチの領分」という投稿では、ビジネスの意思決定におけるパワーバランサーの重要性と、サイエンスのみに加担するマーケティングリサーチ業界の潜在的なリスクに言及していました。加えて、業界が自身の変革を訴えた"JMRAマーケティングリサーチ産業ビジョン"(以下、産業ビジョン)にて類似主張を見つけて独り嬉々としていたというところまでが、前回のブログに書いていた部分でした。実は逆に、当時はうまく言語化できなかったので書かなかった部分がありまして、それが産業ビジョンの内容が全体感としてしっくりこなかったという、ふわふわした点なのでした。

話を戻すと、この投稿を書こうと思ったのは、しっくりこなかったその違和感を言語化できて、ついでに一つの解答にも辿りついたからというのが率直な経緯です。

 

ではその違和感とは何か。

一つには、産業ビジョンが掲げる7つの視点によるコンセプトに、共通した志向性を認識できなかったこと。そして二つには、コンセプトの背景にある環境変化の視点や粒度がバラバラで、背景に本質として何が起きているかがよく分からなかったことがありました。

具体的にコンセプトを見ていくと、一つ一つの視点を見ていくと腹落ちしないものは無いものの、並べたときに整合性をうまく見えてこなかったんですよね。異才の集まりが必要と称してサイエンス&エンジニアリング人材、アート&インサイト人材、ビジネス&戦略人材を欲しながら、なぜ同時に「生活者の代弁者」たらねばならないのか。なぜそれを以てイノベーションを推進する存在でもあらねばならないのか。なぜこんな、理不尽な無理強いをするのか・・・。苦笑

こんな無理強いをするからには、何か共通の、大きくて強力な背景でもあってくれればいいのに。そう思って前提となる環境変化を見てみると、個別具体的な事象が点で並んでいるだけ。これは・・・なにか、複数のステークホルダーに向けて各人の面子を保とうとしてそれっぽいものを列挙しただけで、一つの主張としての整合性を感じられない状態というのが、しっくりこない違和感を明確に言語化できた自分なのでした。

形式的には全体を『イノベーションのエンジン』という言葉でまとめているかに見えますが、それはマーケティングリサーチ業界というサプライヤー・サービスプロバイダー側の都合であって、カスタマー・ユーザー側の都合ではなかった点が、違和感の決め手でした。

結局、マーケティングリサーチ業界では何が起きているのか。何に振り回されているのか。なぜ、今、変わらねばならないのか。サプライヤー・サービスプロバイダー達が腹落ちした『イノベーションのエンジン』に集約される未来の業界コンセプトに対して、カスタマー・ユーザー達に今起きていること、そしてこれから起こることは、どう集約されるべきなのか。この本質が見えてくると、幾分か戦い方の余地が見えてくるだと感じました。

(とはいえ「イノベーションはもう古い」という言説もとある界隈ではよく聞くので、世間の流れは早いものです。)

 

さて、2018年のトレンド予想を眺めていると、8つぐらいのキーワードが浮かび上がってきました。あえて英語で書いているのはいい和訳が思いつかなかったからです。あと各キーワードの詳細もここでは割愛します、すみません。

  1. Speed
  2. Immediacy
  3. Omni-channel UX
  4. Internet of Eyes
  5. Voice User Interface (VUI)
  6. AR everywhere
  7. Personalization
  8. Counterfeit Reality

 

そしてこのキーワードを頭に入れて改めてマーケティングリサーチ業界をぼうっと眺めてみたら、こんな図式が思い浮かんで、独りでしっくり来ました。

 

 

なるべく手短に要約を書いてみます。

左下のCanでカスタマーとセリングの「親密度が上がった」と表現しているのは、「時間的、情報密度的な距離感が網羅的に、極端に近くなった」ということです。変な比喩ですけども、恋人関係をイメージすると案外ニュアンスが合っているように思います。これは昨今の技術革新である程度は既に起きている話で、これから技術的にはVUIやARによって急加速していき、マーケティングトレンドとしてはOmni-channelやImmediacyとして認識されていくのだと思います。

続いて右下のMustですが、これは言わずもがな。国のお達しで働き方改革が全国的に話題に上がった感がありますが、これが一番クリティカルにヒットするのは労働集約的なセリングです。なんとかどうにかして対労働時間比の売上は飛躍させたいと誰もが思うところですが、今までの120%努力すれば解決できる話でもないので、別の考え方が必要になってきます。

そこで、マーケティングが出てきます。セリングの定義を『個別顧客に最適化した個別の販売コミュニケーション』、マーケティングの定義を『顧客集団の平均に最適化した一括の販売コミュニケーション』とすると、個別に手間をかけて最適化をしたいセリングにとって、効率化を図るのにうってつけの考え方がマーケティングなわけです。なるほどすごいです。

しかし、本質的に、『平均に対して一括で』というマーケティングの姿勢は、人力で個別最適を図るセリングの姿勢に逆行します。まともにマーケティングがセリングの相手をすると、業務過多で死にかけますし、その逆もまた然りでしょう。マーケティングの良いところをセリングに適量取り込み、セリングの良いところをマーケティングに適量取り込むと、お互いワッと効率が飛躍するものの、適量を超えると劇薬に変わるという、なんとも恐ろしいものにも思えます。

 

さて、この文脈から見ると、今起きていることが色々と説明できてしまいます。いくつか例を挙げると、

  • カスタマーとセリングの親密度が上がるなかで多種多様かつ大量なデータソースが集まるが、セリングでは処理しきれないのでマーケティング的に活用してみよう、というのが昨今のデータマーケティングであり、マーケティングサイエンスである。
  • カスタマーから遠いマーケティングは計画的に設計したデータを集めていたが、カスタマーに近いセリングは一見不必要な情報も勝手に大量に入ってきてしまうため、取捨選択(つまり目利き)が肝になる。セリング経由のデータは設計されておらず、前提となる検証仮説が当然ないため、マーケティングがセリング寄りになればなるほど仮説推論型のニーズが高まる。
  • マーケティングの求めるスピード感が激的に速くなっているのは、機動力があって短期的成果を求められがちなセリングに寄ってきているから。
  • セリングはカスタマーと恋人のような関係なので、マーケティングが相談相手になるにはカスタマーの気持ちを代弁できるぐらい高度に理解している必要がある。
  • セリングとマーケティングの連携を地で行こうとする王道は、マーケティングオートメーションやワン・トゥ・ワン・マーケティング、パーソナライゼーション等の言葉で表現される。(個人的にはセリングオートメーションの方が近い気はしますが。。)

等が挙げられるでしょうか。なんとなく上手く、一つの文脈として解釈できなくもない感じです。

 

これで先が見えてきました。産業ビジョンの掲げる「イノベーションのエンジン」なる業界コンセプトの裏側に、本質的には「セリングとマーケティングの連携欲求」が横たわっているとしたら、本来であれば相反するセリングとマーケティングを高度にアウフヘーベンする必要が前提としてあり、そこをどう描いてみせるかが、マーケティングリサーチ業界が自ら実現すべきイノベーションの在り方だと思います。

 

・・・ベクトル的には、以下の6つぐらいはパッと思いつく論点でしょうか。今日はこの辺りで筆を置きたいと思います。拙著駄文をお読みいただき、ありがとうございました。

  1. セリングのデータは事前設計できるか?
  2. マーケティングは、セリングと連携するために絶対的に足りないスピードと個別性をどう解消するか?
  3. セリングとマーケティングの共通KPIは設定できるのか?
  4. セリングとマーケティングのパワーバランサーは、どう組織的に機能させられるか?
  5. 意思決定におけるサイエンス、アート、クラフトのパワーバランスは、セリングとマーケティングにどう関連していくか?
  6. マーケティングリサーチがセリングとマーケティングを支えるとは、一体全体どういう状態か?
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