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フォトグラフィー
2016/12/20

雪景色を見ながら写真の画質について考えてみた

秋もすっかり消えて無くなってしまって、日本各地は冬景色。気温も一気に下がり、連日コートを羽織って歩く季節になりました。

冬景色と言えば、雪景色。東京や横浜では年に数回拝めるかどうかですが、山奥では12月の頭から雪がすでに降り積もっているようです。先週末にお邪魔した長野県の高山村も、そのひとつ。

最寄りの須坂駅からバスで東へ東へと移動すると、だんだんと雪が増えていくのが分かります。最後のバス停を下りて、そこから少し進んだところの風景は、木々がほどよく雪と混ざり合い、山際がかすかに霧に覆われていました。

 

snowy-mountains-of-takayama-village

雪景色と言えば、モノトーン。白と黒の色を基本にした写真に仕上がります。ごちゃごちゃした色合いが使えない分、繊細な色合いと画質がより一層目立ちます。

霧に対するこだわりは強く持っています。私が応援大使をしている棚倉町の写真でも、たびたび書いている通り。霧がかり、目の前にあるはずのものが霞んでいって、在るか無いか、見分けが付くか付かないかの絶妙な境界線がどう写し出されるかにこだわっていきたいです。

上の写真は横幅1600pxまで縮小しているので、正直言って、こだわった色合いや画質は判別できない状態です。Jpeg圧縮はしていない分、FacebookをはじめとしたSNSにアップした写真よりは遥かにマシですが、それでも分からないものは分からないです。

※SNSの画質劣化については、この過去記事を参照。

 

ということで、左上の山際を少し拡大、つまりクロップした写真を作ってみました。

 

snowy-mountains-of-takayama-village_cropped

山際の霞み具合が、なんとなく感じられるようになりました。たしかに境界線あたりにも木々がありそうな感じが分かり・・・そうです!

1枚目の写真は、細かい枝はなかなか判別できなかったですが、2枚目の写真は枝があるのがしっかりと分かります。でも、ここでは終わりません。もう一歩!さらにクロップしてみたいと思います・・・(!)

 

snowy-mountains-of-takayama-village_cropped-again

さらに山際をクロップしてみました。これで等倍の横幅1600pxです。ここまで大きくすると、Retina画面で見ると多少の荒さは感じられますが、非Retina画面で見たら全く気にならないのでしょうね。

改めて見ていきたいのは境界線です。先ほどは木々があるのが分かる程度でしたが、等倍の大きさにしてみると、1本1本の枝や、その上に乗った雪の重みが感じられるレベルになってきました。霞んでいる境界線のところも、しっかりと枝々があるのが分かります。

こういった、在るか無いか、見分けが付くか付かないかの絶妙な境界線が感じられると、山奥に行った甲斐があるというものです。でも、ひとつ残念なことに気付きました。この写真、元写真のごく一部を拡大してようやく違いが分かったんです。

 

snowy-mountains-of-takayama-village_pointed

もし元写真のように広い状態で、このこだわりを感じようとしたら、・・・画面に映すのなら、4Kや5K以上の大画面での表示が必要になってくるんです。

つまり、何が言いたいかというと、このこだわりの見え方は閲覧する環境に強く依存してくるわけで、ネット経由、とくにスマホ経由でこのブログを見る人達にはおそらく伝わらないものだろうと言うことです。

 

過剰品質ですね。

ネットで写真を見せるだけなら、こんな品質はいらないです。

 

ではなんのために、ここまでの画質を求めるのか。フォトグラファーであれば、この答えはしっかりと持っている必要があると思います。

"自身が見た風景を独自の視点でもって切り出し、他者に写真を媒介としてその視点を共有する際に、写真に限りなく豊かな再現性を持たせることで、リアルの体験として自身の受けた刺激と写真を介して他者の受けるであろう刺激を限りなく一致させ、高い共振性を発生させるため。"

小難しく考えて書いてみると、今の私の答えはこんな感じでしょうか。この意味での共振性はかなり重要なキーワードだとは思うんですが、ネット先行の昨今の写真観賞環境では、もう少し浅い、脊髄反射的な共感やシェアが溢れているように感じます。

 

この過剰品質、時代にそぐわないというよりかは、写真の価値の二極化が背景にある気がします。尊敬するケント白石先生は、ブログでこうおっしゃっていました。

 

8K、4K、フルハイビジョンの3台をその場で比較しました。まず最初に8Kをいきなり見ましたが、その精細さ、立体感の素晴らしさに言葉も出ないほど感動しました。まさに「そこに在る」と言った感じです。8Kに映った自分の作品を見て、こんな美しい絵が見れるなら生きてて良かったな~そう感じまして、おもわず涙が出そうになりました。(#^.^#)

それから同様に4Kで見ると、かなり画質が落ちて見え、立体感も乏しくなります。ましてフルハイビジョンの一般TVで見ると、もはやこのレベルで写真を見るのは、音楽で言えば、レコード時代に戻る様な感覚でした。(Kent Shiraishi Photo Studioより引用)

 

8Kを求める価値観と、Instagramの写真に感動してシェアする価値観は、同じ写真にかかわる価値観ではあるものの、生まれも育ちも住む場所も、全く異なるものだと思います。続いてケント白石先生はこう覚悟を述べていました。

 

さて、僕の予言ですが、8K-TVが世の中に出て、数年後に一般家庭に普及するようになれば、写真や広告の世界は全て大きく変わる、すなわち大変革するはずです。当然ですが、僕ら写真家も発想を今から変えなければ、わずか数年先の世界で戦えないと思います。

3年後にせまる8K時代に向けて、僕が一番拘るのは画質、クオリティです。そして色。やはりこれはとても大切だと実感しました。今撮った写真が8Kで見てもらえるか?8Kで鑑賞出来るクオリティがあるか?(Kent Shiraishi Photo Studioより引用)

 

ケント白石先生の記事の後半を見ると、画質への異常なほどのこだわりが随所に見られます。正直、その画質の差異は、今の私、というか私のmacbook proでは判別できない域に達しているのだと思います。

 

  • 3年後、誰が8Kを買うのか?
  • 8Kにお金を払う人たちは、何を思って買うのだろうか?
  • 8Kを見た人は、どんな行動・意識変容を起こすのか?

 

そのこだわりが、自分を含めた私のまわりの人たちの延長線上に現れてくる気がしていない現状こそが、写真の価値の二極化の証左ではないかと思う一方、より一層の努力を心がけねばならないと感じる今日この頃なのでした。

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ブログ著者について
那須野 拓実(なすの たくみ)。たなぐら応援大使(福島県棚倉町)。トリプレッソを勝手に応援していた人。元語学屋。時々写真垢とか手芸垢。山とか滝とか紅葉とかが好き。本業はナレッジマネジメントとかデータ分析とかの何でも屋。コロナワクチン接種済み。