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地域おこし
2015/08/20

棚倉町の人たちは地方創生に何を求めているんだろう?おじいさんの言葉から考える地方創生。

棚倉町に来て3回目。地方創生ってなんなのか、もっと分からなくなりました。

なので、今思うことをまとめてみました。

 

今回の棚倉町訪問は2日間の滞在で、今まで以上にいろいろな人とお話ししました。下は10代から、上は70代まで。本当にいろいろな人との出会いがあったのですが、中でも、とあるおじいさんとのお話が印象的でした。

そのおじいさん、ずっと棚倉町に住み、ずっとお店を営んでいる方なのですが、こんなことをおっしゃっていました。

「昔、テレビに取り上げられたこともあったが、テレビに出ると、町の外から人がわんさか来るようになる。小さな店で、たくさんの人に尽くすのは無理だから、やむなくおもてなしの質は悪くなってしまう。でもそんなことはしたくないから、自分たちが今できる範囲で、自然と向き合って、何かの縁で来てくれた人にもてなしをする。そうやって細々とやっていくのがいいんです。」

私がそこにお邪魔したのは本当に偶然なのですが、かなりの名店だったようです。

また、そのおじいさん、こんなこともおっしゃっていました。

「これもテレビの話、山本不動尊がテレビ番組に取り上げられたことがあったんです。その番組の中で、マツタケがとれる、なんて紹介されたもんですから、その翌日なんと数千もの人が来てしまって。当然、人と一緒にゴミの問題、トイレの問題、その他いろいろな問題がやってきてしまったんです。一度自然が壊れたら、もう二度とは戻らない。自然を壊すなんて、そんなことはしたくないんです。」

「取材したいという方がきても、今はお断りさせていただいています。テレビに出て、人が来て、それで自然が壊れてしまったら、あなたたちは責任がとれるんですか、と。責任とれる人なんか、いないですよ。でも、もし取材を受けて、本当に自然が壊れたら、私の責任。そう思っちゃうんですよ。」

店が儲かりすぎて自然が壊れたら自分のせい。だから、今の規模で小さく営んでいきたい。そんなおじいさんの意に沿って、ここでお店の紹介はしないことにします。ただ、おじいさんが店に込める思いだけは伝えたいと思います。

「この店は、いらっしゃった人が自分の家のように帰って来れる場所、居座れるような場所でありたいと思っています。」

興味のある方は、機会があればご案内しますね。

 

これは一人のおじいさんの考え方ですが、この町に住んでいる人は、少なからずこういう考え方の方が多いような、そんな気がしています。

・来る人は拒まず。

・でもやみくもに訪町者を増やしたくない。

・町が好きな人にだけ来て欲しい。

・来てくれる人は家族のようにもてなす。

・自分は暮らせるだけの稼ぎがあればいい。

・町の行事は町内で楽しむ。

・もちろん、町の自然を大切にする。

 

持続的町社会とでもいうんですかね。カタカナ言葉を使えば、サステナビリティですね。大学の頃、グローバルレベルのサステナビリティは研究していましたが、ここに来て町レベルのサステナビリティに遭遇するとは思ってもみませんでした。

冒頭で「地方創生ってなんなのか、もっと分からなくなりました。」と書いたのは、自分が思っていた地方創生の姿と、町が求めている将来の姿に、大きなギャップがあるんじゃないかと思ったからです。

 

自分が地方創生の姿と思っていたのは、

・町のPRをビジネス化する。

・観光客を増やして町にお金を落としてもらう。

・空き家を活用して移住者を増やす。

・既存産業の後継者を確保する。

・六次産業化で新たな事業を興す。 など

 

・・・全然違いますよね。地方創生って、もっとこう、かっこいい若者カリスマリーダーが八面六臂の活躍をするようなイメージだったんですが、たぶん、この町はそういうのは求められていないような気がします。もっと言ってしまうと、経済的発展が再び始まるのを、求められていないような気がするんです。

むしろ求められているのは、以下に書くような姿なのではないかと思っています。

“町を好きになってくれた移住者は積極的に受け入れつつも、人口維持のために無理な移住施策は行わない。人口減という現実は将来は受け入れ、むしろ、人口変化に伴う諸問題の発生をなるべく防ぐため、ソフトランディングのための施策を重視して打っていく。”

地方創生というと、なにかとクールなイメージが付いて回っていますが、棚倉町を含めた普通の田舎町は、そんなキレのある地方創生よりも、これから起こる変化への優しい緩和策が必要なんじゃないかと思うんです。

もちろん、ビジネスをガンガンやっていきたいという気概溢れる方もこれから出てくるでしょうし、そういう人たちに対して町の人も支援を惜しまないと思います。ただ、主流にはならないんじゃないかな、と思ってしまった、今日この頃なのでした。

 

たかだか数回訪問しただけで行きついた考えなので、もしかしたら数か月後には全く違う考え方を持っちゃうかもしれません。でも今回の訪問で、確かに自分が思ったことです。

いろいろ考えていると、自分の棚倉町との接し方も改めていろいろ考えてしまいます。でも深く考えてもしょうがないので、今日はこのあたりで筆をおきたいと思います。

最後に、素敵な棚田で締めくくり!

Paddy Fields from Fukuoka District of Tanagura Town

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ブログ著者について
那須野 拓実(なすの たくみ)。たなぐら応援大使(福島県棚倉町)。トリプレッソを勝手に応援する人。ネイチャーフォト中心の多言語ブログを書いてます。本業はIT&マーケティング界隈でナレッジマネジメントとかデータ分析とかの何でも屋。半年間の育休明けで、家事育児と外働きのバランスを模索中。